ひとりの静けさの中で花を眺める時、心はふわりと軽くなり、誰かとその美しさを分かち合う瞬間には、喜びが溢れ出します。そんな花の力を信じて、四人の異なる人生を歩む人々から、彼らが愛する「花」とそれが紡ぐ繊細な物語を集めました。家族と共に育む庭の花、愛する人に捧げる一輪、そして自分だけの時間を彩る特別な花。日々の生活を優しく包み込む、花からの四通りの手紙を、ここにお届けします。

喜びを届けるために、選ぶ花。

喜びを届けるために、選ぶ花。
喜びを届けるために、選ぶ花。

水面を映す花器に、枝振り豊かなヤマブキを添えて。古の恋多き歌人がこの花に託した情熱を、万葉集のページから今に伝え聞く。花の儚い美しさを、時を超えて伝えたくて、手がけたのは、ただの花ではなく、その一瞬を永遠にする試み。

過去と現在を繋ぐ、ヤマブキの物語

過去と現在を繋ぐ、ヤマブキの物語
過去と現在を繋ぐ、ヤマブキの物語

「万葉集にヤマブキの恋歌があることを知り、驚きました。千年を超えても、人々は変わらず花に心を寄せ、愛を語っていたんですね。」とは、ある日の問いかけに対する、40代男性の淡々としたがロマンティックな返答。細い枝に揺れる黄金色の花は、日々の生活に色を添えてくれます。「花を愛でるようになったのは、花をこよなく愛する人の影響でした。季節ごとの花を選び、贈ることで、花を飾る場所があること、そして贈る相手がいることの幸せを感じています。」選んだ花器は、生きている花だけでなく、散った後も美しい姿を楽しむため。枝物に至っては、花が咲き、散り、そして新しい葉が芽吹く過程までを愛でることができます。「家族も花を愛していました。庭にはヤマブキやキンモクセイがあり、花の移ろいを幼い頃から感じていました。」と振り返ります。今は、花器選びや水替えも楽しみの一つ。「毎日の触れ合いが、日々の出来事や思い出を花と共に刻んでいくんです。リビングに飾ったシャクヤク、玄関を彩ったショウブ。それぞれが、カレンダーにはない、私たちだけの時間を記憶に残しています。」

世代を超えて受け継がれる、花の絆。

世代を超えて受け継がれる、花の絆。
世代を超えて受け継がれる、花の絆。

まるで試験管をつなぎ合わせたようなユニークな花器に、庭で愛情を込めて育てた草花を一輪ずつ挿して。我が家には、光溢れるサンルームのような中庭があり、訪れる人々に「この家の一部になれる」と感じてもらえるよう、花々で満たしています。

花と共に紡ぐ、家族の物語

:花と共に紡ぐ、家族の物語
花と共に紡ぐ、家族の物語

「花は、本当に愛らしい存在ですよね。」そう語るのは、家の至る所に花を飾る50代女性。リビングには、庭で育てたクリスマスローズ、鮮やかなローズマリー、そしてブロッコリーの花を。収穫後に咲いた小さな花たちも、家の中で新たな命を吹き込んでいます。「花は、私たちの愛情と手間に応えてくれるんです。母がよくそう言っていました。子どもの頃、母と一緒に歩きながら花の名前を学び、今でもその植物図鑑は宝物です。押し花が見つかると、心が躍ります。」家じゅうに花を飾り、毎日水を替えるのは、心のリフレッシュにもなっています。「息子は、"また花と遊んでる"と言いますが、彼も花束をもらうと、自分なりに飾っていますよ。」最近のお気に入りは、スマホで花の名前や花言葉を調べられるアプリ。「散歩中に見つけたナニワイバラの花言葉は、愛と清純、そして癒やし。そんな人に出会えたら素敵ですよね。私自身は、長く音楽を続ける多年草のよう。自分らしく咲き続けることが、私の願いです。」

花のささやかな策略。

花のささやかな策略。
花のささやかな策略。

透明なガラス製の花器を選ぶのは、茎のラインを眺めるのが好きだから。パンジーの黄色と淡いピンク、長い茎を持つアリウム、小さな黄色いオオニソガラム。今日の花は、葉が野菜のようで食べられそうなほど。その姿に目を奪われます。

花の持つ、自然な魅力

:花の持つ、自然な魅力
花の持つ、自然な魅力

「子どもが外で摘んだ花を大切に持ち帰る姿、あの少ししおれた様子が好きですね。」とは、花の自然な形や存在に魅了される40代女性の感想。生物学者を夢見たほど花が好きで、特に花の形や葉のつき方に心惹かれます。ガラスの器に生けるのは、ピンクのオダマキ、茶紫のエビネ、黄色いパンジーと白いバルビネラ。くたっとした茎や下を向いている花も、その独特の美しさがあります。「完璧な形よりも、花をそのまま花器に入れて、時間と共に変わる様子を楽しむのが好きです。自己主張を強める花、方向を変える花、日々の変化が面白い。」と、パンジーの後ろ姿を指して、「うなじのカーブが美しい」と一言。「花の"策略"というのは、伸びたいという意思や環境に抗う姿勢、そして子どもの手によってしおれる自然さにも見られます。それぞれの花が持つ個性や差異が、束ねられても残ることが、私にとっての花の魅力です。」

朝露に濡れた、見過ごされた美しさ。

朝露に濡れた、見過ごされた美しさ。
朝露に濡れた、見過ごされた美しさ。

裏庭で偶然見つけた一輪の雑草を、年季の入ったガラス花器に挿しました。「雑草と呼ばれても、その美しさは本物です。」細かく見れば、小さな球根が付いていることに気づきます。調べてみると、それはハナニラ、別名「ベツレヘムの星」と呼ばれる花でした。

家を彩る、日常の小さな発見

:家を彩る、日常の小さな発見
:家を彩る、日常の小さな発見

我が家では、花がない日はありません。庭の花、贈り物の花、常に家の中は花で満たされています。妻は四季折々の花を庭で育て、咲いたらそれを切って家の中に飾ります。「時には、誰もが見落とすような雑草にさえ、美しさを見出します。」今朝はいつもと違い、裏庭でひっそりと咲いていた雑草に心を奪われました。「その薄青い花は、誰からも気づかれずに咲いていました。こんなに美しいのに、どうして誰も見ていないんだろう、と。」そのまま古いガラス瓶に挿し、家族が集うリビングのテーブルに置きました。何も凝ったことはせず、自然の姿をそのままに。「写真を撮るとき、私はいつも『あ』と感じます。それは、心が動かされた瞬間。この雑草も、まさにその『あ』の瞬間でした。」ただそれだけの行為で、こんなにも幸せを感じられる。それが、花と共に生きる喜びです。

花と共に紡ぐ、日々の物語

花と共に紡ぐ、日々の物語
花と共に紡ぐ、日々の物語

自然愛好家から都市生活に疲れた魂まで、私たちの生活は花と共に色鮮やかになります。庭の雑草から手に入れた珍しい花まで、それぞれが語る物語には、日常の中の小さな感動が詰まっています。花農家として、これらの瞬間を大切にし、皆さんと共有できることに心からの喜びを感じます。花を通じて、人と人との繊細な関係性を育み、豊かな心を育てていきましょう。

Add the color of flowers to your daily life
あなたの日常に花の彩りを
お花について、お気軽にご相談ください

KIMIDORIのフラワーアレンジメントに関するご質問や、特別なご要望があれば、いつでもお問い合わせいただけます。あなたの花に対する思いを大切に、心を込めてお答えします。あなたの日常に花の彩りを。どんな小さなご質問やリクエストも、私たちにとっては大切なお話です。お気軽にお問い合わせくださいね。

篠宮恵美
About me
數度 祐介:花と共に、新たな物語を紡ぐ。

「MONDEROSE」を通じて、花と共に生きる喜びを皆さんと分かち合いたいと思っています。世界を巡りながら花と人との関係について深く学び、その経験を生かして「MONDEROSE」を立ち上げました。選び抜かれた花々を通じて、日常に新しい彩りと癒しを提供しています。
『花と共に生きる』をモットーに、花が日々の生活にどのように溶け込み、私たちにどのような価値をもたらすのかを伝えていきたいと思います。
季節ごとの花の選び方や、花と共に過ごす豊かな生活のヒントなど、花農家としての専門知識を元に、新たな物語を一緒に紡いでいきましょう。